3月22日のお稽古では前回に引き続いて釣釜で長緒の点前をしました。昼間は人数も少なかったので、途中続き薄茶にしたり、長緒茶入で貴人清次をしたり、少し時間のかかるお点前にも挑戦しました。

 前回との違いはI先生がご自宅からわざわざ雲龍釜をお持ちくださったことでした。雲龍釜は筒形の小振の釜で蓋には掻き立てカンというちょっと変わった形のつまみが付いています。つまみというよりむしろ輪っかが付いていると言った方がいいかもしれません。蓋を開け閉めする時はこの輪の根元に近い部分を親指と人差し指で挟むようにして持ち上げます。 

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 また、釜の蓋の上に茶巾を置く時には、掻き立てカンを茶巾の角で向こう側に倒し、茶巾を茶碗に仕舞う時にはまた茶巾を使って手前に戻します。茶巾を置く時には置くスペースを空ける必要があるので忘れることはまずありませんが、茶碗に茶巾をしまう時にカンを扱うのを忘れる人が続出しました。

 また、蓋置には五徳を使いました。五徳の蓋置は釣釜、透木釜のように炉中に五徳を据えない場合などに用いられる蓋置で、名前の通り五徳の形をしています。向きは二本爪が前。釜の蓋を載せるとき、柄杓を引く時は輪になった方を上にして使いますが、棚に飾る時は打ち返して爪の方を上向きにします。

 掻き立てカンも五徳蓋置も、言われればどうということのない扱いなのですが、実際に手を動かしてやってみることはとても大切だと感じました。
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 さて、この日の床は利休居士のお軸に菜の花。まもなく利休忌です。利休居士の命日は旧暦の二月二十八日ですが、裏千家のお家元では毎年三月二十八日に利休忌を行なっています。菜の花を利休忌に供えるのは利休居士のお好きな花であったから、最後に活けたのが菜の花であったから、蟄居を命じられて淀川を下る時、淀の渡しの土手の菜の花をご覧になったから等様々な説があるそうですが、今となっては確かなことはわかりません。

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 利休忌にちなんで、この日はお菓子も菜の花きんとんです。銘をつけるなら「胡蝶の夢」とでもいたしましょうか。